JATECTMコースの意義と概要

 標準化された「外傷初期診療ガイドライン」を広く普及させるには、啓発活動が必要である。外傷診療には、外科学、脳神経外科学、整形外科学、麻酔科学や集中治療学など様々な分野を包括した知識と技能が要求される。それぞれの専門分野との連携も重要であり、いずれの領域の医師も関与しなければならない。しかし、救急医療の現場では教育より診療を優先しなければならないこと、技術力を必要とする処置が多いことなどから、実地修練には限界がある。このため、単なるセミナーや座学のみでは効果を期待できない。これを補完する意味でoff-the-job trainingが必須となる。もちろん出版物としての「外傷初期診療ガイドライン」は最低必要な知識であるが、標準的な医学知識と技能を生かすためには様々な症例を想定した問題解決能力が必要である。そのためには模擬診療やシミュレータによる修練は重要であり、その中で意思決定の資質を向上させることを目的にしている。ガイドラインと一体化して展開していることがoff-the-job trainingであるJATECTMコースの最大の特徴である。

 JATECTMコースは外傷患者を診察する機会のある全ての医師を対象とする研修コースである。JATECTMコースは、従来の講演やセミナーとは異なり、ケースシナリオや実技指導を中心とし、少人数を対象に行う体験学習である。JATECTMコースでは日常診療で遭遇する様々なケースシナリオが用意され、臨床現場を想定して外傷患者の診察と処置を一人一人が実践できる。成書のみでは得難い、迅速な判断能力と実践的な技術習得が可能である。現在、JATECTMコースは2日間で、座学、技術・技能習得、ケースシナリオ等をこなし、最後に学習効果を判定するためにOSCE(客観的臨床能力評価試験)が行われる(表)。なお、本コースは32名の受講(医師)に対し、1度に約40名の講師が投入されている。講師は臨床の現場で外傷診療や救急医療に携わっている医師である。2002年4月にコースが誕生し、現在、毎月2〜3回のペースで開催されている。その結果、受講者総数は3,497人、講師総数は512名となっている(2008年4月1日)。

1日目

時刻内容
8:40-受付・集合
9:00-9:10(10)挨拶(講義室)
9:10-9:25 (15)JATECの外傷診療理論(講義室)
9:25-10:05(40)初期診療DVD放映とSkill stationのポイント(講義室)
10:05-10:15 (10)休憩
10:15-15:35(240+80)Skill station (30 x 8)
(Stationの名称)(教育内容)
Station T外科的気道
Station U胸腔穿刺・ドレナージ
Station VFAST
Station W心嚢穿刺・骨髄内輸液
Station X胸部X線読影
Station Y骨盤X線読影
Station Z頭部外傷
Station [Trauma Imaging
15:35-15:50(15)休憩
15:50-16:20(30)初期診療(PS/SS)デモンストレーション(講義室)
16:20-18:30(120+10)各station
(初期診療)初期診療;primary surveyと蘇生(8ブース)

休憩(休憩時刻はERごとで自由)
(初期診療)初期診療;secondary survey(8ブース)
18:30-18:45(15)質疑(講義室)


2日目

時刻内容
7:50-8:00 (10)模擬診療(CS)およびOSCE進行の説明(講義室)
8:00-10:05(120+5)模擬診療1 (30分x 4)
10:05-10:15(10)休憩
10:15-11:40(80+5)模擬診療2 (20分x 4)
11:40-12:40(60)昼食
12:40-14:05(80+5)A-D:OSCE(20分x 4)

E-H:ポストテスト、ケーススタディ(講義室)
14:05-14:15(10)移動、休憩
14:15-15:40(80+5)A-D:ポストテスト、ケーススタディ(講義室)

E-H:OSCE(20分x 4)
15:40-16:00(20)質疑、修了証授与、閉会(講義室)
開始〜終了時刻(講義+休憩時間 分単位)

表 JATECTMコースのカリキュラム



 コースの受講には、前述の「外傷初期診療ガイドライン」の熟読と同書に添付されているDVDでの事前学習およびウエブ上でのプレテスト提出が前提となっている。コースの受講やインストラクター資格取得に関連した情報は別のページから取得していただきたい。



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